研究概要 |
本研究では,まず代表的なα+β型チタン合金であるTi-6Al-4v合金に,1098K〜1173Kの温度域で1s間加熱後に急冷するという極短時間熱処理(第1段階目)を施すことにより,応力誘起変態が生じうる準安定な残留β相の体積率を恣意的に上昇させることを通じて延性を向上すると同時に,α'マルテンサイト相の生成量を極力押さえて降伏応力を低下させ,難加工材である上記チタン合金の冷間加工性を改善した.続いて,上記の熱処理を施した材料に冷間加工を行った後,さらに753K〜953Kの温度域で40s間加熱・空冷するという短時間熱処理(第2段階目)を施すことにより強度の回復・改善を試み,以上の一連のプロセスの実用化に向けた取組みを行った.その結果,第1段階目の熱処理を施すことで,チタン合金の伸びは最大で73%改善(未処理材の伸び11%に対して熱処理材の伸びは20%)すると同時に,降伏応力は22%(未処理材の降伏応力959MPaに対して熱処理材の降伏応力は645MPa)低下しすることが示された.また,上記の熱処理材に破断ひずみの90%まで塑性変形を加えた後に第2段階目の短時間熱処理を施したところ,第1段階の熱処理により大きく低下した降伏応力を未処理材と同水準まで回復可能であることが見出された.なお,本年度は関連する1件の学会発表を行うとともに,1件の学術論文が掲載された.以上の結果を踏まえ,次年度には適切な熱処理条件を見出すべく詳細検討を行うとともに,複数年に渡る本研究において得られた知見を総括する予定である.
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