研究概要 |
平成18〜19年度に実施した研究により,短時間溶体化処理を施した材料について,微視組織観察,硬さ測定,X線回折,電子線回折および引張試験・破面観察を行い,冷間加工性の向上という点で優位な短時間溶体化処理条件を見出した.また,同条件で短時間熱処理を施した材料をエリクセン試験および曲げ試験に供した結果,冷間加工性の向上が確認された.以上の結果に基づいて,平成20年度には冷間加工性が改善された条件で短時間溶体化処理を施した材料に塑性ひずみを加え,さらに第2段階の短時間時効処理を施した際の強度変化について検討を行った.具体的には,以下の通りである. (1)組織変化の検討:前年度までに得られた結果において,冷間加工後に短時間熱処理を施した材料の組織変化について一部不明な点があった.そこで,当該年度には,X線回折,透過型電子顕微鏡観察および電子線回折を通じて組織変化に関する詳細検討を行った. (2)短時間熱処理・冷間加工を通じた一連のプロセスの構築:前年度までに明らかとなった冷間加工性を改善する上で優位な熱処理条件において短時間溶体化処理を施した後,塑性ひずみ(破断ひずみの90%程度)を与え,さらに時効処理に相当する500〜700℃で40s程度の短時間時効処理を施した.以上の一連のプロセスにより,冷間加工性向上のために一度低下させた静的強度の回復が認められた.しかしながら,その改善率は予想を下回っており,この点に関しては,さらなる検討が必要であることが明らかとなった.
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