研究概要 |
本研究課題は,薄膜化による応答速度向上が検討され,マイクロマシン用として期待が高まっているTiNi形状記憶合金(SMA : Shape Memory Alloy)薄膜マイクロアクチュエータの実用化を促進するために,薄膜化に伴って特に問題となることが予想される,水素環境下におけるTiNi合金の遅れ破壊の寿命,および形状回復機能の劣化寿命を明らかにし,その寿命評価法を提案することを目的とするものである.本年度は以下のように研究を行なった. 1.TiNi形状記憶合金薄膜とマイクロアクチュエータの作製 超積層圧延法により,厚さを4〜16μmの範囲で変えたTiNi薄膜マイクロアクチュエータを作製した.この超積層圧延法では,純Ti板と純Ni板を交互に積層して圧延器で厚さ20μm程度まで圧延した後,再度,強度鋼板をスペーサとして用いた圧延を行い,TiNi複合膜を作製した.この複合膜に熱拡散処理を施し,基板に拡散接合されたTiNi薄膜を得た.その後,精密ワイヤ放電加工とSiエッチングを行い,片持ちはり状マイクロアクチュエータを得た.また,スパッタリング法で薄膜マイクロアクチュエータを作製する装置を構築した. 2.微小強度試験装置の準備 現有の微小材料試験装置により水素環境中での試験を可能とするために,試験片部が環境液槽内入る構造となうよう改造し,試験力および変位の測定精度が十分であることを確認した. 3.水素環境下における遅れ破壊試験 硫酸中および5%NaCI溶液中で遅れ破壊試験を実施した.まず,試験前に,60℃の同じ水溶液への予備浸漬を行なった.その後,溶液中で一定負荷を与える破壊試験を行い,負荷応力と破断時間の関係のデータを取得している.また,試験中,マイクロアクチュエータ試験片の表面レプリカを採取し,AFMによる表面微小き裂の発生・成長過程の観察を行なっている.
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