ウサギ由来細胞様細胞株Sirc(Riken Cell Bank)をTYPE-1コラーゲンゲル溶液に50万個/mlの濃度で混ぜて直径35mmのディッシュに注いだ後、温度37℃、湿度100%、二酸化炭素5%、空気95%のインキュベータ内で3日間静置培養した。次に、本補助金で購入したインキュベータを用いて、空気中の酸素濃度を皮膚内の酸素濃度に合わせて3%まで低下させ、本研究で製作した圧縮負荷装置を用いて圧縮ひずみ10%、20%、30%、40%をそれぞれ1ディッシュのゲルブロックに約1分間加えた。ゲル内の細胞には負荷前後にCalcein-AMとPropidium Iodide(以下、PIと略す)を用いて生細胞の細胞質と死細胞の核との二重蛍光染色を施して、倍率10倍の水浸対物レンズの共焦点レーザ顕微鏡を用いて水平に走査して5μm間隔のスライス画像を得た。また、実験後、アルコールでゲル内の細胞を死滅させて、PIで染色してゲル内の総細胞数を測定した。死細胞数を全細胞数で除した死細胞率を指標として圧縮ひずみの影響を評価した結果、圧縮による死細胞の割合は数%で、圧縮ひずみの大きさとの関係は不明瞭だった。ひずみ30%で圧縮時間1時間の条件では、1分間圧縮した条件と比べて死細胞率はやや多いかもしれない程度であった。さらに、ゲル表面をカバーガラスで覆う低酸素濃度条件や温度27℃の低温条件でも死細胞率を求めたが、比較対象条件での死細胞率との差異を評価することは困難だった。評価が困難だった理由として、ゲル内の細胞密度、細胞分布の均一性、全細胞数の測定精度、正常状態として設定するゲルのひずみレベル(今回の実験では零)などに問題があったためと考えられる。また、圧縮ひずみを加える前後の蛍光像の比較から一部の細胞に収縮が見られた。これは細胞に過大な負荷が加わって、細胞が接着していたマトリックスから外れたためと推測される。
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