研究課題/領域番号 |
18560082
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
山田 宏 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 准教授 (00220400)
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研究分担者 |
宮田 昌悟 九州工業大学, 大学院・生命体工学研究科, 助教 (70376515)
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キーワード | 線維芽細胞 / 共焦点走査型レーザ顕微鏡 / コラーゲンゲル / 温度低下環境 / 栄養欠乏環境 / 細胞形態 / 有限要素解析 |
研究概要 |
ヒト皮膚線維芽細胞をコラーゲンゲルに包埋した、厚さ約0.3mmのヒト真皮層3次元モデル(TMLDM-001、東洋紡)を用いて、褥瘡遅延環境を見出す実験を行った。すなわち、温度を通常の培養環境の37℃と低温度環境の25℃の2種類、培地を通常の培養環境のDulbecco's modified eagle medium(DMEM)とHam's F-12の1:1混合培地と栄養欠乏環境のDulbecco's phosphate-buffered saline(DPBS)の2種類として、37℃・DMEM+Ham's F-12(コントロール)、37℃・DPBS、25℃・DPBSの3条件についてCO_2インキュベータに6時間静置して、実験開始時、3時間後、6時間後の3度、光学顕微鏡で細胞形態を観察した。その結果、ゲル内で細長く伸展した細胞のアスペクト比(長軸長と単軸長の比)は37℃・DPBSの条件で6時間後に7程度まで顕著に減少して球状化が進行したが、他の時刻および他の条件ではその2倍程度のアスペクト比であった。この結果はブタ皮膚組織への温度の影響に関する文献の報告を支持し、栄養欠乏環境下で温度を10℃程度下げることによって細胞の伸展能を維持する効果を定量的に評価する指標となる。ゲル内で伸展した線維芽細胞のストレスファイバーを共焦点走査型レーザ顕微鏡で観察した結果、細胞表面の長手方向に沿って分布していた。酸素濃度の影響については、温度25℃で濃度を通常の20%から5%に減らして細胞形態を観察した結果、酸素濃度による顕著な変化は見受けられなかった。また、ゲル表面を深さ方向にひずみ約30%圧縮したところ、ゲルが水平方向に大きく変位して、細胞もそれに伴って移動した。これは皮膚内の細胞の変形とは異なる応答と思われ、圧縮環境の作成について再検討する。さらに、紡錘形状の孤立した細胞がゲル内部に水平に配置した有限要素モデルを作成し、ゲル表面に圧縮変形を作用させて、細胞に生じる応力・ひずみ状態を調べた。細胞とゲルはいずれもneo-Hooke体とし、細胞の弾性率をゲルの弾性率の0.08倍にした。有限要素解析の結果、ゲルに比べて軟らかい細胞に圧縮ひずみが集中する傾向が見られた。
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