研究概要 |
あらかじめ強化材を積層した金型内に樹脂を含浸させて硬化させるRTM成形法は,複雑な3次元形状を有する製品の成形に適している.高品質なFRPを低いコストで成形するためには,金型内の樹脂流動先端位置の検出,樹脂未含浸部の検出,樹脂硬化のモニタリングを行うスマート化が必要不可欠である.本研究ではRTM成形法のスマート化の基礎となる樹脂状態のモニタリング技術の確立を目的とし,コイルと磁石により構成され測定物に非接触で超音波の送受信が可能である電磁超音波センサを用いた樹脂流動モニタリングを行った. 金型内表面での超音波の反射係数は,測定点での樹脂の有無および樹脂の硬化状態に依存して変化する.本研究は金型内で共振させた多重エコーの振幅および減衰の変化から樹脂流動先端位置の検出や樹脂の硬化状態のモニタリングを試みるものである.これまで樹脂流動モニタリングで用いられてきた誘電率センサが金型内部に設置する必要があるのとは異なり,金型外部から測定を行うため成形品の表面性状や機械的性質の低下を招かない. 炭素繊維クロスを軟鋼製の金型内部に積層し,樹脂を真空引きにより含浸させるRTM成型を行った.まず直線部の長いコイルと複数の磁石とから構成される多点計測用センサを製作し,多重エコー振幅変化を利用して樹脂流動先端位置の検出を行った結果,目視により確認された樹脂先端の通過時刻とずれがあったが,クロス下面のほうが先に樹脂が含浸しており,センサ側の金型表面での樹脂の通過を検出できていることが確認された.次に樹脂含浸完了後に多重エコーの減衰定数の変化を長時間にわたって測定した結果,減衰定数はある時刻からほぼ一定値をとり,樹脂硬化の完了を推定できる可能性が示された.さらに金型面内での多重エコー振幅分布を測定した.樹脂含浸前と樹脂硬化後の振幅差を用いることにより樹脂未含浸部を検出できる可能性が示された.
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