強化繊維を配置した金型内に樹脂を注入するRTM成形法は、複雑な三次元形状のFRPを高品質に成形するのに適しているが、完全な成形品を得るためには金型内部の樹脂の流動状態や硬化度をリアルタイムで調べるスマート化が必要である.本研究は、金型内部の樹脂流動先端位置および樹脂の硬化度を金型外部に設置した電磁超音波センサにより評価することを目的としている. これまでの研究で、新たに開発した多点同時計測用電磁超音波センサを用いて金型内部に発生させた定在波の振幅を測定すると、測定部を樹脂先端が通過する際に階段状に振幅が低下すること、成形後に一点計測用センサを金型上で走査することにより樹脂先端形状やボイドを検出できること、定在波の減衰変化から樹脂の硬化を評価できることが明らかになった. 今年度は樹脂流動先端位置の評価精度の向上をめざし、樹脂先端位置と振幅変化との関係を詳細に調べた.コイルと磁石から構成される電磁超音波センサでは磁石底面寸法がセンサの有効面積と考えられるが、磁石底面寸法が10mm角であっても20mm角程度の範囲内に樹脂先端があれば振幅低下が起こり始めること、あらかじめ求めておいた振幅低下率の較正曲線からセンサ寸法以上の分解能で樹脂先端位置を評価できることが明らかになった.ただし、各測定位置における振幅低下量が異なるため、この手法はリアルタイムではなく成形終了後しか適用できないが、樹脂流動シミュレーションなどの基礎データとなる樹脂流動速度の計測には有効である.
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