研究概要 |
本年度は,界面引張強度評価法であるcruciform(十字型)試験片法をさらに発展させ,従来の十字型の試験片形状による,界面の引張強度測定法から,界面に垂直及びせん断応力が同時に作用する組み合わせ応力下でのはく離発生条件を求める方法への発展を試みた.使用する材料としては,ガラス繊維強化エポキシ樹脂とした.これまでは,繊維方向と負荷方向が直交するものであったが,任意の角度を持たせつつ,試験片端面における界面での応力特異性を避けるような試験片形状を模索し,試験片形状を決定した.これについては,有限要素法を用いた応力解析を行った.負荷方向と繊維方向の角度としては,まずは90゜,67.5゜,45゜,22.50゜とした.試験片形状を検討後,実際に試験片の作製,負荷試験によるはく離観察を通して,組み合わせ応力下でのはく離発生条件を求めた.本実験により,本材料系では,22.5゜の試験片では,界面破壊が生じないことがわかり,40゜,35゜,30゜と角度を振ることにより,より精密な破壊条件評価を試みた.これにより,この材料における界面の破壊条件(マイクロフラクチャクライテリオン)を求めることができた.これにより,炭素繊維強化エポキシ複合材料等他材料への本手法の適用性の可能性を示した.また,従来のフラグメンテーション試験やプルアウト試験による界面せん断強度との比較を行い,本手法による測定結果は従来法による結果よりも強度を大きく評価することがわかった.これは,従来法が応力特異性の影響を受けたものであり,本手法の信頼性を表すものであると考えられた.このように,信頼性を有する界面破壊条件を評価することにより,複合材料の微視的損傷発生シミュレーションへの基礎的なデータ提供ができる環境を整えることができた.
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