1.TiNi形状記憶合金の疲労特性の研究: TiNi合金の超弾性細線、超弾性細管および高弾性細線の曲げ波労特性を片振り平面曲げ、両振り平面曲げおよび回転曲げに関して実験的に調べ、次の点を明らかにした。いずれの材料に関しても、疲労寿命は片振り平面曲げでは長く、両振り平面曲げと回転曲げでは短い。両振り平面曲げと回転曲げの疲労寿命の差異は小さい。疲労寿命曲線を最大曲げひずみと破断繰返し数の関係で整理すると、低サイクル疲労寿命はべき関数で表わされる。いずれの曲げ波労に関しても、疲労限度の最大ひずみはマルテンサイト変態の開始点近傍にあり、0.7%〜1.0%の曲げひずみである。超弾性細管の疲労き裂は片振り平面曲げの場合には外表面の1点から発生し、扇形の波労き裂進展領域が現れるが、両振り平面曲げと回転曲げにおいては内表面の一定の幅で発生し、外表面に貫通後最終破断する。最終破断領域ではディンプルが観察される。 2.ポリウレタン系形状記憶ポリマーの長期形状固定と回復特性の研究: ポリウレタン系形状記憶ポリマーの長期間に亘る形状固定と形状回復の特性を実験的に調べ、次の点を明らかにした。高温で変形を与え、ガラス転移点以下の温度で形状を固定し、無負荷状態の低温で保持すると、変形した形状は保持され、その後の加熱で元の形状を回復する。しかし、ガラス転移点以上の温度で変形した形状を保持すると、元の形状に回復しなくなる。この非回復現象は二次賦形として単純な機構による記憶素子の成形加工法として応用できる。二次賦形特性は形状保持のひずみ、温度および時間に依存する。二次賦形率は形状保持時間の指数関数で表わされる。 3.形状記憶複合材料の研究: 形状記憶合金と形状記憶ポリマーからなる形状記憶複合材料の作製と機能特性を検討し、次の点を明らかにした。形状記憶ポリマーをマトリックスとし、形状記憶効果を示す合金と超弾性を示す合金の2種類の合金をファイバーとする複合材料を作製した。加熱と冷却により2方向の動作をすることを確認した。また、加熱と冷却で回復力が増加と減少することを確認した。
|