微細なノズルから電解液を噴射させて加工を行う電解液ジェット法は、ノズルの走査によりマスクレスで複雑形状を加工できるという特徴を持っている。この加工法で微細で複雑な3次元形状の加工を実現するため、平成18年度は以下のような研究項目を行った。 まず、より微細な加工を実現するため、微細ノズルを用いたときに頻発するノズル詰まりを解決した。具体的には、ノズルとシリンジとの間にメッシュ0.22μmのフィルタを取り付け、異物を除去した。一方、フィルタの使用により圧力損失が大きくなり、跳水現象が得にくく、工作物表面上に電解液がたまるので、高精度加工の実現ができなくなる。そこで、工作物表面上に電解液がたまらないよう、工作物表面上の電解液を吸引する機構を追加し、跳水現象の促進を図った。その結果、市販の25μmのセラミック製微細ノズルを用いてマイクロピットと溝の加工を実現した。しかし、市販のノズルは形や大きさに制限があるため、微細放電加工技術を用いて、円形状やスリット状の微細金属ノズルを製作して、加工実験を行った。その結果、スリットノズルを用いる場合、ギャップを短くするほどノズル形状に近い加工形状が得られることが分かった。 微細ノズルによる加工が安定的に行えるので、単一曲線溝の重ねあわせによる複雑な3次元形状の加工を試みた。まずはシミュレーションによって、曲率半径の異なる曲線溝の形状を解析で求める。次に各単一曲線溝を重ね合わせ係数をつけて単純に重ね合わせていき、重ね合わせ形状を求める。さらに重ね合わせ形状と目標形状の差を最も小さくなるように各重ね合わせ係数を求める。最後に重ね合わせ係数から溝加工用のノズル走査速度を求めて、実際の加工に用いる。以上により、複雑形状加工のためのノズル軌跡や走査速度を求める方法を確立した。シミュレーションと実験結果を比較することにより、本方法の有効性を確認した。
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