1. 本年度は、ヘルツ押し込み時のリングクラック形成に先立つ、初期欠陥の生成プロセスを詳細に検討した。まずヘルツ解析解変位場の中の圧子接触部外縁にMDモデルを埋め込み、変位分布にパラメータとして含まれる圧子押し込み荷重(押し込み深さ)を漸増させ、その時の変位分布の変化を使って解析解制御MDを実行した。 2. その結果、上記1のシミュレーション方法では、押し込み深さ7ミクロンでも欠陥は生成されないことが判明した。この結果は先在欠陥を前提とする既存の破壊理論を支持するように見えるが、実験的事実とは矛盾する。そこで圧子接触部外縁以外からの(弾塑性波の伝播などの)影響が、欠陥生成に関与していると予想した。 3. 上記2を踏まえ、圧子先端直下に対して上記1と同様の「解析解制御MD」を実行し、この部分でのアモルファス化と、その際の弾塑性波の放出を確認した。またこのアモルファス化は、圧子直下に続いて圧子接触部外縁下でも起きることを明らかにした。 4. 上記3で圧子先端直下および圧子接触部外縁下からの弾塑性波の放出が確認された為、上記1のシミュレーションを実行する際、アモルファス化で放出された外部振動を付加した。付加振動は周波数1THz、振幅2オングストローム程度で、これを付加すると圧子接触部外縁で欠陥が生成されることが判明した。
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