研究概要 |
本研究においては,B_4Cを骨格構造とする高耐熱B-C-X系硬質膜を切削工具にコーティングし,需要が高まる難削材の高効率加工の実現を目的とする.平成19年度は,これまで進めてきたDCマグネトロンスパッタリング法によるTi-B-C薄膜形成に関する研究を発展させ,実際の切削工具にコーティングし,難削材の一つであるTi合金の旋削実験を行った.その結果,以下のことが明らかとなった. 1.Ti添加量の増減により,Ti-B-C薄膜の密着力の制御が可能となった.また,反応ガスとしてCH_4ガスを用いることにより無潤滑下でのでTi-B-C薄膜め摩擦係数を0.2程度まで低下させることができた. 2.超硬合金製スローアウェイチップにTi-B-C薄膜をコーティングすることにより,Ti合金のドライ切削においても切削抵抗が低下し,被削材(Ti合金)の表面平滑性は向上した. 3.切削距離1000mにおいて,スローアウェイチップ(すくい面)上のTi-B-C薄膜は一部剥離した. 上記の結果は,我々が高性能化を進めてきたTi-B-C薄膜を工具上にコーティングすることにより,生産性向上に繋がるドライ環境下での難削材加工が実現可能であることを示すものであり,当初の研究目的を達成することができたと言える.ただし,Ti-B-C薄膜の耐久性(密着力)には改善の余地がある.この対策として,工具とTi-B-C薄膜との間に中間層としてTi膜を形成することを検討しており,その効果を確認している.今後はこの中間層形成によるTi-B-C薄膜の密着性向上に関する検討を系統的に行い,Ti合金切削用工具に展開していく予定である.
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