研究概要 |
近年,ナノテクノロジー,バイオテクノロジー,情報通信のためのデバイスの研究が盛んに行われている.これらの分野では,ガラス,圧電セラミックスなどの無機絶縁体が重要な役割を果たすが,金属などの導電体の加工法に比べ,無機絶縁体への微細加工法は進展が遅れている.そのため,小型部品用の加工機でもマイクロファクトリのような小型の生産加工機械を構築することができていない. 本研究では,平成20年3月までに電解液中で放電を起こすことで絶縁体に3次元微細形状を創成する電解放電加工法の加工性能を改善することを目的とする. 本年度は下記の2点について検討した. (1)マイクロバブルの絶縁効果 放電が発生するためには電極周辺の気泡密度が十分に高くなり,絶縁状態に近くなる必要がある.そのため,塩化ナトリウム水溶液に乱流方式により発生させたマイクロバブルを混入した.導電率は140mS/cmから100mS/cmに低下したが,放電を起こすには十分ではなかった.また,旋回流方式でも同様の結果となった.したがって,ポンプを用いた方式のみでは,電極近傍の気泡密度を十分に増加させることが困難であることが明らかになった. (2)加工状態の測定と加工メカニズムの解析 瞬時のエネルギー密度を高くし平均のエネルギーを低く抑えることで形状精度を向上するために,放電加工で通常用いられる1ms以下の短パルス放電における加工特性を測定するとともに,気泡の発生状態を観察した. パルス幅とデューティを変化させて,放電波形を観察した.パルスを印加した場合には,最初は電流が流れて電気分解により気泡が発生する.その後,絶縁状態になるため,放電が発生する.パルスの休止時間を長くすると気泡が消滅するため,ふたたび電流が流れるフェーズが現れる.したがって,パルス幅が短くなりすぎると,加工が進行しないことが明らかになった.
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