研究概要 |
実験結果を熱伝導解析に反映させるに当って,これまでの単発放電痕の観察では溶融再凝固層や盛上がり部分に関する情報が不十分なことが分かった.そこで,新たに断面形状積算法を開発した.本方法は,単発放電痕を端から端まで数ミクロンずつラッピングで除去し,各々の断面形状を測定してデジタルデータにするものである.また,断面観察と同時に各断面の放電痕上面から見た位置も測定してデジタルデータ化する.これによって,ある注目した断面形状データとその一つ前の断面形状データから両者の間の断面形状を3次元CADで作成したパーツにすることができる.このパーツを全て組合わせることで単発放電痕の全体の形状を3次元で表示することが可能となる.また,これまで推測や比較的粗い近似でしかなかった単発放電痕に残留する溶融再凝固層の体積や盛上がり部分の体積を積算することも可能である.本方法による観察結果から,放電加工ではアーク柱で溶融した工作物の殆どが放電痕上に溶融再凝固層として残留することが明らかとなった.逆に言えば,溶融部分の大半を除去することができれば,放電加工の加工速度は飛躍的に増加させることが可能となる.さらに,本観察結果によって従来から考えられている工作物上面の溶融部の除去は,「加工液の気化・膨張の際に生じる力学的な作用」という説に疑問を呈するものとなった.そこで本年度は,様々な条件下において単発放電痕を作成し,断面形状積算法により放電痕性状の観察を行い放電痕形成のメカニズムの解明を目指す.これによって,放電痕に残留する溶融再凝固層を減少させる指針を見出せる可能性がある.その結果,加工速度などの加工特性の大幅な向上方法の提案ができると考えられる.
|