研究概要 |
放電痕形成メカニズムの解明には詳細な単発放電痕のデータが必要である.そこで,昨年度までに単発放電痕の盛り上がり部分などの溶融再凝固層体積を詳細に調査可能な断面形状積算法を開発した.本方法は放電痕を端から端まで数ミクロンずつラッピングで除去し,各々の断面形状を測定してデジタルデータにする.そして,ある注目した断面形状データとその一つ前の断面形状データから両者の間の断面形状を3次元CADで作成したパーツにし,このパーツを全て組み合わせることで単発放電痕の全体の形状を3次元で表示が可能である.また,各パーツには盛り上がり部分の体積などの各種の情報を有しているため,これまで推測や比較的粗い近似でしかなかった単発放電痕に残留する溶融再凝固層の体積や盛り上がり部分の体積の積算を求めることが可能である.ところで,同一電気加工条件で生じる単発放電痕形状は,中央部が窪んだ一般的な形状と平坦な放電痕形状が知られている.単発放電痕形状は放電痕形成メカニズムを反映しており,両放電痕を詳細に調べることで放電痕形成メカニズムの解明が期待できる.そこで,本年度は一般的な放電痕と平坦な放電痕が形成される放電環境の違いを調べるとともに,断面形状積算法を用いて単発放電痕の詳細な調査を行なった.その結果,平坦な放電痕は盛り上がりがほとんど観察されず,溶融した工作物はそのまま放電痕上に溶融再凝固層として残留するのに対して,一般的放電痕は放電痕底部に40%程度,周囲の盛り上がり部分に50%以上が溶融再凝固層として残留することが分かった.また,溶融部の中央部付近に圧力が加えられ,それによって放電痕周囲に盛り上がりが形成される可能性が高いことも分かった.これにより,放電痕形成には気泡の内部圧力が大きな影響を及ぼしている可能性があることが分かった.
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