研究概要 |
個々人の体質に配慮した合理的な医療,すなわちテーラーメイド医療が普及すると,投薬の確度が高まり治癒時間の短縮が図られ社会貢献が期待される.著者らはこれらの普及の促進を図るために精密加工技術を用いた安価で高信頼性を有する医療機器の開発を目指している.その中でも注目されている医療診断器具にμTAS(マイクロタス:Micro Total Analysis Systemの略)がある.これは,言わば,小型化学分析システムである.検体より取り出した血液や体液にマイクロチャネルで搬送する機能によって,反応試薬との混合,マイクロセンサによる分析機能を搭載した医療診断器具である.このマイクロチャネルには,従来,化学的な手法や半導体技術による加工技術が提案されているが,高価な製品になることが容易に推測される.そこで,μTASの基材であるガラス基板へ超硬ボールエンドミルを用いた切削加工技術を用いた可能性が示されるようになってきた.本研究では,さらに切削加工時に電界砥粒制御技術を応用して,積極的に切削潤滑剤を工具刃先に回りこませ,被加工面が良好な仕上がりを得られる技術の開発について検討を試み,安価で量産性を有し,環境にも配慮した新たな脆性材の加工方法を提案する. 電界砥粒制御技術を応用して脆性材試料に潤滑剤を工具刃先先端に配置制御する技術 著者らは,既に砥粒分散型機能性流体を開発し,交流電界を印加しながら精密研磨や微細部の仕上げ加工に適用し,高能率で高品位な仕上がり面が得られることを明らかにし,その一部は実用化し工業界に貢献している.本研究では,通常の加工時と同様に工具先端に潤滑剤を滴下し,工具を高速回転させても,潤滑剤は工具と試料部で保持されることから,加工後の仕上がりが良好になることを脆性材の代表であるガラス材を試料にした加工実験で明らかにした.すなわち,潤滑剤に水,無電界下のシリコーンオイル,電界を与えたシリコーオイルを潤滑剤に用いて,切削加工を行いその結果を評価した.その結果,電界を与えると良好な仕上がり面が得られることが明らかとなった。これより誘電率を持つ潤滑剤に電界を与え刃先に作用させることで,試料と工具との接触抵抗が抑えられ,良好な仕上がり加工面が得られる.次年度である平成19年年度には、試料に延性材を用いて本研究の応用化をさらに深め検討する.
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