研究概要 |
意匠設計を行うデザイナにとって,曲線は製品や作品のシルエットや形状を決定するもっとも基本的なデザイン要素であり,それを美しく魅力的にすることは意匠設計の質を高めるために必要不可欠である.美しい曲線を定式化することが可能であれば,CAD等のデザインツールを開発するうえで,曲線の生成や変形,その品質の評価等において,標準や規範となる曲線を定義・参照することが可能となり,デザインの質を著しく向上させることが期待できる. そこで,本研究では美しい平面曲線の代表例である対数(等角)らせんとクロソイド曲線の性質について考察し,それらの性質を統一的に表す表現式として美しい曲線の一般式を提案する,本研究ではこの一般式を満たす曲線を「美的曲線」と呼ぶ.さらに,美的曲線の曲率対数分布図が直線で表されること,また,曲線を接線方向と主法線方向に異なる倍率でスケーリングしても,その形状が不変であるという自己アフィン性を持つことを示した. 美しい曲線の一般式を満たす曲線すなわち美的曲線は平面曲線に限定されているとともに,既存のCADシステムとの互換性を保証するためにはB-spline曲線への近似による変換が望まれる.そこで,本研究では平面曲線が自己アフィン性を持つための必要十分条件を明らかにするとともに,美的曲線を3次元に拡張した.1)フルネー・セレーの公式を用いて曲率とともに捩率の逆数である捩率半径の定数乗を曲線長の一次式として与えることにより定義した.この場合は空間曲線としての自己アフィン性が保証される.2)直交する2つの平面に対して,それぞれ平面曲線である美的曲線を射影として指定し,それらの曲線から空間曲線を定義した.また,位置の誤差を最小化する最小自乗法と,位置とともに曲率の誤差を最小化する共役勾配法により,美的曲線を近似する3次B-spline曲線を求めた.
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