研究概要 |
本研究は,結晶粒径1μmを有する超微細粒鋼をしゅう動接触(滑り・転がり接触)機械要素に適用するために,超微細粒鋼の寿命と強度向上法を解明し,さらに,しゅう動接触面の強度を巨視的なき裂進展に基づいた設計法と結晶粒集合体オrダーの微視的破壊機構に基づく設計法の2つの観点から研究することが,目的である. 自動車などに用いられている歯車・軸受などのしゅう動機械要素は,潤滑油の油膜(弾性流体潤滑:EHL)を介しながら2つの転動面が接触してエンジンの動力を車輪に伝えている.しゅう動機械要素には,高速・高トルク条件での運転が,ますます要求されている.歯車の損傷には,曲げ損傷,表面損傷,焼付きのほかに摩耗などがある.高速・高トルクで運転される状態では,しゅう動面は高負荷(数GPa)・高温(百数十度)となるため表面損傷が問題となる.その問題解決の一つの方法は,しゅう動機械要素の素材である鋼を強化することである. そこで,表面加工精度がナノオーダである軸受を取り上げて,複数回の圧延と温度制御により創製された超微細粒鋼の疲労強度をしゅう動接触疲労試験によって明らかにする.さらに,表面破壊機構を光学顕微鏡などによる巨視的破壊形状観察と透過型電子顕微鏡などによる表面微細構造観察により巨視的および微視的視点での超微細粒鋼の破壊機構を解明する.そして,超微細粒をしゅう動機械要素に適用するための設計指針を確立する. 本年度においては,超微細粒鋼素材の製造とその素材を用いた軸受球の製作を行った.従来用いられているSUJ2鋼素材の軸受試験を実施するとともに,損傷表面観察などに用いる設備を調整し,来年度に向けての研究実施体制を整えることができた.
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