研究概要 |
生体関節の稼動時,関節表面を覆う関節軟骨は転がり運動と滑り運動を含んだ転がり滑り運動を経験する.本年度は,まず関節運動時の転がり滑り運動を再現し,CO_2インキュベータ内にて培養中の再生軟骨モデル表面に負荷するための転がり滑り負荷装置を作成した.購入したCO_2インキュベータ内に,これも購入したリニアアクチュエータとサーボモーターを配置し,インキュベータ外に設置したモ-タドライバおよびコンピュータにより協調制御する.これにより,回転ローターと培養中の再生軟骨モデル表面との間に生じるすべり率と平均滑り速度をパラメトリックに設定し,培養組織表面に存在する細胞に負荷される流体せん断,および組織内部の細胞に負荷される機械的圧縮,せん断ひずみをコントロールし,それに対する細胞の応答を評価することを可能とした.さらに回転ローターと培養再生軟骨モデルとの相対位置をマイクロメーターヘッドにより調整可能とした.これにより,ローター/培養組織間の接触状態を設定し,流体潤滑状態から混合潤滑および境界潤滑へと潤滑状態を遷移させ,各潤滑領域における軟骨細胞応答と組織形成の相違を比較検討することを可能とした. 転がり滑り負荷装置の開発と平行し,アガロースをスキャホールドとした再生軟骨モデルの圧縮負荷培養実験を行い,スキャホールドとして用いるアガロースゲルの物質拡散特性が,動的圧縮負荷下における細胞外マトリックス組織の形成と機械的機能発現に及ぼす影響を評価した.その結果,アガロースゲルの特性に関わらず動的圧縮負荷が培養軟骨細胞によるグリコサミノグリカン(GAG)の産生を促進し,再生軟骨モデルの圧縮剛性を高めること,使用するアガロースゲルの物質拡散係数は産生されたGAGのモデル内への蓄積と組織化に影響を持つことが示された.
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