研究課題
転がり接触面を有する機械要素の使用限界向上策として、転動面の塑性変形を許容する新たな転動面転動疲労設計手法を取りまとめた。第3年度は、第1、第2年度で解明した塑性変形進行と接触圧力、弾性流体潤滑油膜厚さの関係を踏まえ、塑性変形が生じる条件下で転動疲労試験を実施した。使用した試験機は光干渉式油膜厚さ計測試験機のガラス板を焼入れ鋼板に換えてローラを押し付ける方式で標準端部形状の影響確認を、4ローラ試験機のセンタローラをテーパとして強制片当りで接触面端部に塑性変形を生じさせる状態での転動疲労発生限界の確認試験を実施した。これらの実験の結果、主に次の4点が明らかとなった。(1)転動繰り返しにより塑性変形が安定化する接触条件は、塑性変形後の形状で求めた接触圧力と内部最大せん断応力位置での加工硬化後硬さの比が0.4である。(2)転動面端部が自由端の場合は、塑性変形により初期の最大接触圧力位置が非接触となる、従って転動疲労が生じない。(3)塑性変形が生じる場合の転動疲労発生限界は、シェイクダウン後の形状で決まる接触圧力と接触繰返し数の関係で示され、初期形状による最大接触圧力の塑性変形による緩和を考慮する必要がある。(4)塑性変形が生じる転動面に生じる転動疲労ピットは、初期接触圧力最大位置に生じるのではなく、塑性変形発生後の形状に基く接触圧力でほぼ決まる。以上の結果を踏まえ、研究の最終とりまとめとして、塑性変形の有無、塑性変形が生じる場合の接触圧力変化と油膜厚さ変化を考慮する新たな転動面設計手順を提示した。提案手法は、動力伝達用歯車の歯面強度設計、転がり軸受の転動疲労設計として、特に接触面端部プロファイル設計に活用できることがわかった。
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Tribology Online Vol. 4, NO. 1
ページ: 1-5