研究概要 |
水に微量の長鎖状高分子あるいは棒状ミセルを形成する界面活性剤を添加すると,乱流域での抵抗が著しく低減することはToms効果として知られている.著者らは微小なダンベル状要素で高分子を模擬したモデルを構築し,本モデルを用いて二次元チャネル内乱流のDNSを行い,Toms効果を再現した.また,この離散要素が縦渦減衰による抵抗低減機構と壁面近傍の付加応力による抵抗増加機構の2つの機構を内在していることを示した. 昨年度に引き続き、混入要素の移流を考慮した計算を行ったが、昨年度はチャネル半幅と摩擦速度で定義されるレイノルズ数がRe_tau=150の場合のみの計算であったのに対して、Re_tau=150-600の計算を行い、要素混入による抵抗低減効果に対するレイノルズ数依存性を調べた。 計算は、二次元チャネル内乱流対象とし、混入要素は(1)流体中で一様に発生する、(2)流体から受ける引張り力に応じた確率で切断消滅する、ものとした.(2)の効果によって流体中で要素の濃度分布が生じるが、瞬時の要素濃度は移流拡散方程式を解くことによって求めた。 その結果、流体中における混入要素の発生量を一定とした場合、レイノルズ数が大きくなると抵抗低減率が小さくなり、Re_tau=600ではほとんど抵抗低減が起こらなかった。これはレイノルズ数が大きくなるにつれて微小なスケールの運動が増し、これによって多くの要素が切断されるためであると推察できる。
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