研究概要 |
本年度は,DNA添加溶液における乱流抵抗削減機構の解明に向けて,数値的な検証と実験的な検証を行った.数値的な検証においては,先ずNewton性流体における乱流の生成を担う渦構造の特定を行った.一様等方乱流と一様せん断乱流のDNSのデータから,乱流中に形成される,中心部の渦管の周囲に渦層が螺旋状に巻き付くstretched spiral vortex (SSV)において渦層の伸張によりエネルギーのカスケードと散逸が生成される事を明らかにした.次に,溶媒に対する高分子の非親和的追随性(非affine性)を高分子応力τ_<ij>の近似に取り入れたJohnson-Segalman(J-S)方程式を用いた,一様せん断乱流のDNSにより,粘弾性効果の非affine性に対する依存性を検証した.この結果,非affine性に対し抵抗削減が非単調に増減し,非affine性が中間の場合に一様せん断の駆動に必要な仕事が最大になる事を示した.次に,非affine性がSSV形成に及ぼす影響の検証を行い,非affine性が最も弱い場合は,高分子エネルギーが渦管領域に沿って分布するため,τ_<ij>による圧力Pτが渦管中心部で極大値をとる事により低圧領域を中心部にもつSSVの成長が抑止されるため,抵抗の低減が起きるのにたいし,非affine性が最も強い場合は,高分子エネルギーが主に渦層に沿って分布するため渦層の伸張と螺旋状の巻き付きが抑制され,SSV形成そのものが低減されるため、最大の抵抗削減が得られる事を示した.この抵抗削減機構は,一様等方乱流・円管内乱流における機構と同一である.次に,rotating-disk apparatusのDNSのためのコードの開発と整備を行った.実験的な検証においては,DNA添加溶液の予備検証として,界面活性剤添加溶液における抵抗削減の検証を,流体中の格子引き上げによる減衰一様等方乱流の実験により,行った.活性剤としては3種類を用い,クラフト点よりも高い温度に設定してミセル形成状態にし,濃度に対する依存性を検証した.PIV法による流速分布の計測を行ってenstrophyを算出し,界面活性剤水溶液のenstrophyは水の場合に比べて小さい値を示す事を明らかにした.この結果から,乱流エネルギーの散逸量の低減すなわち,乱流生成の削減の発生を確認した.次に,DNA添加溶液における実験を行うための準備作業を行った.
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