研究概要 |
大気乱流と同等の性質を有する高レイノルズ数乱流中での浮力噴流の熱・運動量輸送の解明は、煙突や火山から排出される加熱空気や物質の大気環境評価において重要であり、本研究では浮力噴流単体(噴出口直径D=83mm,噴出口断面での平均風速0〜2m/s,温度差0〜30K)、および、大規模乱流中(乱流レイノルズ数R_λ≒400)の加熱噴流場の挙動を解明した。実験は、煙線法による高速度カメラでの流れの可視化、および、冷熱2線式温度流速計による温度・速度場の計測を行い、以下のことを解明した。 (1) 浮力噴流の噴出口近傍では、非加熱噴流と同様に、速度せん断によって小規模な渦構造が形成されるが、局所的な温度分布による揺らぎの影響を受けて渦形成周波数は時間的に変化する。この小規模渦の発達過程では、渦同士の合体現象、合体することによって形成される大規模渦の形成が不安定になり、この傾向は、周囲流体との温度差が大きいほど顕著である。この様な秩序構造の変化は、噴出口近傍領域での熱・運動量輸送に大きな影響を与える。 (2) 浮力噴流の内部は、温度分布の時空間的な揺らぎのために温度・速度場が不安定になっており、噴流内部と外部の両側から乱雑領域が拡大していき、その結果、非加熱噴流と比較すると、浮力噴流のポテンシャルコアは短くなり、噴出口から2〜3Dの領域でポテンシャルコアは消失する。 (3) 噴出口近傍では浮力噴流の特性が特に支配的であるが、噴出口から十分に離れた遠方では大規模乱流の影響を強く受けて、浮力噴流が大きく蛇行するとともに、活発な熱・運度量輸送が行われる。これには、大規模乱流中の強い乱れと大スケールの乱流渦(インテグラルスケール〓170mm)が大きな役割を果たしている。
|