研究課題
低圧下あるいはミクロなシステムの気体に特有の現象の一つは、気体の温度場によって様々な定常流が誘起されることである。本研究では、この流れを駆動力とする、運動する部品が不要のポンプ(熱駆動ポンプ)の開発、およびそれを用いた混合気体分離の研究を行った。1.熱駆動ポンプの開発:前年度の研究では、気体中で異温度の網を僅かに離して並べたとき、網の目が気体の平均自由行程に近いならば、網を通り抜ける気体流が生じることを実験で示し、新しい熱駆動ポンプの駆動力として提案した。今年度は、熱駆動ポンプを気体分離機として利用する場合、動作圧力が高い方が望ましいことを考慮して、網の目を微細化しポンプの動作圧力を上昇させる方法を研究した。具体的には、近接した微細な二つの網の間の温度差を維持する方法として、目の粗い網・微細な網の複合網を用いる方法を考案した。試験の結果、目の粗い網を加熱・冷却し、網を通る熱流によって、微細網の温度差を維持できることが確認できた。これは、ポンプの熱源として、電力以外のさまざまな温度差を利用できることを意味している。また、複合網を用いる場合、微細網だけでなく、目の粗い網もポンプとして動作し、その結果、ポンプが動作する圧力範囲が広がることも分かった。2.気体分離効果の実証実験:以前に代表者が試作した、10Pa程度の低圧で動作する熱駆動ポンプ(熱尖端ポンプ)と2種混合気体を用いて、熱駆動ポンプが実際に気体分離効果を持つことを実験的に示すことに成功した。混合気体分離効果が実在することは、1910年にKnudsenが熱駆動ポンプを考案して以来、初めての結果である。結果の詳細は、2008年夏の国際希薄気体力学会で発表する予定である。
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Rarefied Gas Dynamics, eds. M. S. Ivanov and A. K. Rebrov 1
ページ: 1158-1163