研究課題
基盤研究(C)
低圧下あるいはミクロなシステムの気体に特有の現象の一つは、気体の温度場によって様々な定常流が誘起されることである。本研究では、この流れを駆動力とする、運動する部品が不要のポンプ(熱駆動ポンプ)の開発、およびそれを用いた混合気体分離の研究を行った。熱駆動ポンプを気体分離装置として応用する場合、スループットを向上させるために高圧で動作させる方が良い。この場合、熱駆動ポンプ内の流路幅を数μmの程度で作成する必要が生じる。本研究では、その実現方法について大きな進展があった。1.熱駆動ポンプの開発:気体中で異温度の網を僅かに離して並べたとき、網の目が気体の平均自由行程に近いならば、網を通り抜ける気体流が生じる。この仕組みを用いれば、流れを誘起する多数のマイクロチャンネルを容易に実現することができる。今回の研究では、10μm程度のマイクロチャンネルのケースも含む3通りの流路幅について装置を作成し、上記の流れが実際に発生することを確認した。研究においては、マイクロチャンネルにおいて温度差を維持する方法として、目の粗い網・微細な網の複合網を用いる方法も考案した。この方法を用いると、ポンプの駆動エネルギー源は、外部からの温冷熱の供給を用いることになる。複合網を用いた場合、微細な網だけでなく、目の粗い網もポンプとして動作し、その結果、ポンプが動作する圧力範囲が広がることも分かった。2.気体分離効果の実証実験:以前に代表者が試作した、10Pa程度の低圧で動作する熱駆動ポンプ(熱尖端ポンプ)と2種混合気体を用いて、熱駆動ポンプが実際に気体分離効果を持つことを実験的に示すことに成功した。熱駆動ポンプに混合気体分離効果が実在することは、1910年にKnudsenが熱駆動ポンプを考案して以来、初めての結果である。結果の詳細は、2008年夏の国際希薄気体力学会で発表する予定である。
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