研究概要 |
自己組織化膜を施したシリコンウェハー試料平板について、BCAおよびエチレングリコールに対する前進および後退触角θ_A、θ_Rの測定を行った.表面にnmスケールの欠陥をもつ膜と一様な標準膜において、接触角履歴(θ_A-θ_Rには,1〜2°程度の差が現れることを示した.この結果は、表面に分子レベルの欠陥がある場合、巨視的なぬれ性に変化が現れることを示している.過去の理論的な考察から、傾斜平板上の液滴の転落角度は、接触角履歴の大きさに直接依存することを明らかにしている.欠陥膜と標準膜の判別を、測定がより容易な転落角度から行うため、種々の液滴体積に対する転落角度の計算を行った.その結果、接触角履歴に対する転落角度の変化を大きくするには、体積をできるだけ小さくする必要があることを示した. 1μ1の液滴を対象に、試料板上での転落角度の測定を行った。1〜2°の接触角履歴の差に対し、転落角度には6°以上の変化が現れ、接触角の測定よりも感度よく欠陥膜が判別できることを示した.また、転落角度よりさらに傾斜角度を大きくしたときの液滴の転落速度について測定を行った.転落角度より10°程度大きくなると、速度が急激に大きくなる現象が認められた.目視で観察が可能な、約1mm/minの速度が現れる傾斜角度には,欠陥膜と標準膜で、5°以上の差が認められた.転落角度よりさらに簡便な測定から,欠陥膜の検出が可能であることを示した.
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