本研究は、気相に放電電極を配置した気液2相流体のモデルにおいて、気相微弱放電下で誘電液体に誘起する電気流体力学現象を定量的に解析する方法を具体化することを研究の目的として実施した。本年度は、まず内径が30mmの透明な円筒ガラス容器内に平板電極(底面)と直径が1mmの針状電極を配置し、その電極間部分に電気流体力学現象を呈する評価モデルを構築した。次に、Molecular Tagging Velocimetry(MTV)による流速ベクトル分布の測定を実施した。以下に本年度の研究実施内容と成果について記述する。 1.電気流体力学現象に対する流速計測法の構築 流れ場計測には各相流体の電気的・機械的性質を変えることなく、さらにトレーサ粒子の帯電を防ぐことと、電気力集中により極端に流速値が高く局所的に速度が十数m/sになる領域にも適用できることが要求されていた。そこで、粒子画像流速測定法には分子の燐光を時間的かつ空間的に追跡するMTVの適用法を構築した。MTVの適用トレーサには、吸収波長のピークが270nmまたは420nm付近であり、燐光波長のピークが525nm付近の可視光を放出するBiacetylを用いた。流速の計測は、トレーサの励起時刻から燐光撮影時刻までの遅延時間の間に、トレーサが燐光を発しながらイオン流に追従して移動した距離から算出できることを明らかにした。 2.イオン流を伴う気相流れ場測定と解析 本現象の流体力学的効果の特徴を定量化するために、気液界面を構成する気液2相流体の電気流体力学場の流速分布計測を実施した。特に、放電電極近傍におけるイオン流の流体運動に注目したところ、局所均に極めて高い速度勾配が発生している現象について定量化することができた。そして、これは放電電極近傍のイオン密度と電界強度に依存したConductive type EHDの駆動力として解析できることがわかった。
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