研究概要 |
本研究では,レーザー計測を用いて定常拡散火炎内で形成れるPAHsの化学種を同定する手法を検討した。これは,微妙に異なるPAHsの吸収特性の差や蛍光スペクトルの形状,さらには,蛍光寿命の違いなどを読み取ることによって,火炎内のPAHsの同定を試みようとするものである。実際の実験では,真空紫外領域に発振波長(193nmおよび248nm)を有するArFならびにKrFエキシマレーザーと,355nmの発振波長を有するNd:YAGレーザーの第3高調波を用いてPAHsを励起し,そこから発生する蛍光の様子やスペクトルの形状を求めることを試みた。しかしながら,火炎内において複数のPAHsが共存する場で多様なPAHsのスペクトルの特長が類似していたために,PAHs分子のおおよその炭素数を推定することができたのにとどまり,明確な同定を行うことはできなかった。ただし,様々な分光データを取得することができたほか,当初の計画通りに様々な燃料の拡散火炎について,その火炎構造やPAHsの分布,PAHsからすす粒子への遷移過程などを詳細に明らかにすることができた。また,PAHsのレーザー計測による同定が十分にできなかったことを補うために,ガスクロマトグラフィーを用いて火炎内のPAHsを直接サンプリングして分析する実験を行い,レーザー誘起蛍光法で得られた様々なデータとサンプリング法のデータを比較して,火炎内で生じているPAHsからすす粒子への変化の様子を明らかにすることができ,火炎構造を解明するという目的に対しては一定の成果が得られた。
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