研究概要 |
本研究では,レーザー誘起蛍光法を用いて定常な拡散火炎内に形成されるPAHs分子の化学種を同定しようとするものである.研究の初年度では(1)PAHs蒸気の励起・蛍光・時間分解スペクトルの測定,(2)ラマン散乱分光法を用いた火炎内の直鎖系燃料蒸気の分布測定法の開発,(3)火炎内PAHs形成に与える燃料種の影響をそれぞれ研究目的とした.その結果次の結論を得た.(1)のPAHs上記の励起・蛍光スペクトルについては励起波長を248nmならびに290nm,さらに,193nmについてデータを取得した.時間分解スペクトルについては,PAHsとすす粒子からの赤熱発光の精密な時間分解スペクトルを得ることができた,しかしながら,(2)のラマン散乱による直鎖系燃料上記の分布測定法については,すす粒子からの赤熱発光の強度が強いことから,ラマン光の抽出が難しいことがわかった.(3)の燃料種の影響については,ガス燃料のプロパンガス,直鎖系液体燃料の代表であるヘキサン,芳香族燃料のベンゼン,さらに,軽油とその軽油に潤滑油を混入した場合の燃料について,PAHs分布や,分光分析によるPAHs炭素数の火炎内での変化を明らかにすることができた.研究の2年度目では,主に355nmの発振波長を有するNd: YAGレーザーの第3高調波を用いてPHAsを励起し,そこから発生する蛍光の様子やスペクトルの形状を求めることを試みた.しかしながら,火炎内において複数のPAHsが共存する場で多様なPAHsスペクトルの特長が類似していたために,PAHs分子のおおよその炭素数を推定することができたのにとどまり,明確な同定を行うことはできなかった.ただし,レーザー計測による同定が十分にできなかった代わりにガスサンプリング法を導入し,火炎内の局所PAHsの濃度を求め,レーザー計測の結果と比較することで火炎内におけるPAHsからすす粒子への変化の様子を明らかにすることができ,火炎樺造を解明するという目的に対しては一定の成果が得られた.
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