自励振動式ヒートパイプの高性能化と性能予測手法確立のため実験および数値解析を行った。ヒートパイプの構造上の工夫として加熱部は銅板とし、その内部に直径2mmの孔を24個設け、この孔に内径2mm、外径3mmの銅管24本を接合して断熱部および冷却部とし、12ターン流路を形成した。これにより発熱素子と加熱部の間の熱抵抗が低減されるとともに冷却部において高い対流熱伝達が得られる。作動媒体は水およびR141bであり、封入率は50%とした。作動媒体に水を用いた場合、設置角度の影響として鉛直ボトムヒート、水平、鉛直トップヒートの順に性能が優れ、熱輸送量増加とともに設置角度の影響が減少した。またR141bに比べ熱輸送量増加に対する加熱部・冷却部温度差の変化が小さい。一方、R141bの熱輸送特性は設置角度の影響をほとんど受けず、熱輸送量増加とともに加熱部・冷却部温度差が単調に増加した。いずれの場合にも本実験範囲である熱輸送量1000W以下では熱輸送限界は生じなかった。おおまかな傾向として熱輸送量が中程度以下ではR141bの方が、熱輸送量が大きい領域では水の方が優れた性能を示した。水の場合について壁温変動の詳細測定を行った結果、熱輸送量が小さい領域では間欠的振動あるいはサーモサイホン的動作など特徴的な動作状態が生じること、また冷却部側に形成されるU字形液柱の振動が生じていることなどが分かった。さらにR141bにダイヤモンド微粒子を加える実験を行い、微粒子添加により熱輸送性能が向上することが分かった。実験に加え、振動液柱内の流れ場と温度場を厳密に解くとともに断熱部管壁の非定常熱伝導も厳密に解く数値解析を行い、水平設置の水の場合について実験結果の傾向に近い計算結果が得られた。解析上の問題として、蒸発および凝縮について簡単化のための仮定がなされており、その厳密化が課題である。
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