研究概要 |
前年度に製作した立体結合型マイクロ冷凍機においては,冷凍効果がシリコン・ウェハーの優れた熱伝導率(熱伝導率:145W/(m・K))により阻害されると考えられた.そこで本年度は,熱伝導率の優れたシリコンの代わりに熱伝導率が劣る感光性のガラス(熱伝導率:1.00W1(m・K))を使用して,フォトファブリケーションにより流路を形成し,パイレックスガラスと水ガラスにより接着することにより感光性ガラス熱交換器を作製した.さらに,シリコンを使用して作製した蒸発部と立体的に接合して感光性ガラス熱交換器を有する立体結合型マイクロ冷凍機を作製し実験を行った. 実験条件は,冷媒にはエチレンを使用し,質量流量10mg/s,入口圧力20MPa,出口圧力0.1013MPa(大気圧)および質量流量5mg/s一定,入口圧力2.4MPa,出口圧力0.1013MPa(大気圧)とした.ただし,真空チャンバーの不調のため実験時のチャンバー内の圧力は大気圧のままとした. 実験結果は,入口温度から絞り出口温度までの温度降下に関しては,それぞれおよそ9Kおよび10K程度であった.これはジュール・トムソン効果による温度降下と考えられるが,先にシリコン・ウエハーで熱交換器及び冷却部を製作したマイクロ冷凍機の,同じ入口圧力での温度降下よりも小さかった.この要因のひとつに,真空チャンバー内の圧力が大気圧のため断熱が阻害されたことが考えられる. また,熱伝導率の優れたシリコンの代わりに熱伝導率が劣るステンレス(SUS304,熱伝導率:16.0W/(m・K))を使用した熱交換器を試作したが,パイレックスガラスとうまく貼り合わせることができなかった.さらに,熱交換器における材料の熱伝導率,冷媒の質量流量の影響を調べるために数値解析を行い,充分に熱交換がなされる場合には,熱伝導率の低い素材を使用した方が熱交換性能がよい.また,充分な熱交換をするために流速を抑えた設計をする必要がある等の結果を得た.
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