EU規格の燃料性状に適合または準じるココナッツ油メチルエステル(CME)をアルカリ触媒法により製造するためのエステル反応条件について検討した。実験に用いたココナッツ油はけん化価が約254で、KOHをココナッツ油に対し約1.2wt%、メタノールを理論量の2倍使用し、反応温度を約60℃、反応(撹搾)時間を約1時間でエステル反応させ、その後、副生物の粗製グリセリンを静置分離し、メタノール除去、水洗、脱水処理を行い、CMEを製造した。製造したCMEの遊離グリセリン、モノ・ジ・トリグリセリド(未反応油脂と中間生成物)、メタノール、水分およびカリウム濃度を測定した結果、これらの項目はEU規格に適合した。 製造したCMEはなたね油メチルエステル(RME)やパーム油メチルエステル(PME)に比べ動粘度が低く、軽油に近い値であり、蒸留性状も良好である。また、CMEに流動点降下剤の適用を試みたが、流動点(-5℃)はほとんど変わらなかった。 次に、製造したCMEを単気筒4サイクル水冷直噴式ディーゼル機関(行程容積1007cm^3、定格出力12kW/2200rpm)に適用して実験を行い、燃焼・排ガス特性についてRME、PMEおよびJIS2号軽油と比較検討した。実験は軽油使用時の標準噴射系(ジャーク式)を用い、2000rpm一定の下で負荷を変化させて行った。結果として、(1)CMEの燃料噴射時期は軽油とほぼ同じであり、(2)CMEの着火遅れは軽油とほぼ同じであり、(3)CMEの正味熱効率は他の供試燃料とほぼ同じで、(4)CMEの排ガス濃度(CO、HC、NOx、Smoke)は他の供試燃料より低減され、(5)高負荷時で軽油に比べCO、HC、NOxおよびSmoke濃度はそれぞれ約14%、約47%、約8%、約50%低減した。 以上の結果より、EU規格に適合または準じるCMEはディーゼル燃料として有望であることが分かった。
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