DMEディーゼルエンジンの最適噴射システムの提案を行なうために本年度おこなった研究要素とその成果を以下にしめす.(ア)実機による異常噴射の回避条件の補足実験…この異常噴射現象は、DMEの沸点が軽油等にくらべて低いことがその原因であり、噴射系のDMEの圧力を高めれば回避可能である.時間的に大きく変化する噴射系内の圧力測定をおこない、平衡状態の飽和蒸気圧で発生限界値をほぼ決定することが可能であることを示した.これにより、現状のエンジン噴射系の利用技術の指針は確立した.以後、最適噴射システムの提案のための基礎研究を展開した.(イ)異常噴射時の噴霧形状の可視化実験…ハンドテスターによる噴射角とペネトレーションを求めた.超臨界状態のDMEは、興味深い現象が得られつつある.(ウ)計算モデルによる気泡の発生機構の解明…燃料室、プランジャー室、吐出弁室、噴射管、インジェクションノズルから成り立つ流路内の非定常流れを解析し、気泡発生の条件を明らかにした.流路全体が液体《飽和蒸気圧以下になっても液体状態が保たれるすなわち過熱液》である場合の計算は完成した.(エ)蒸発後の状態について取り扱える新計算モデルの提案…モデル構築のために現象を観察するため噴射系を模擬した流路を製作し気泡の発生状況を観察した.これに基づき、蒸発後の状態を記述する新たな計算モデルの開発を開始した.
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