研究概要 |
非定常噴霧は数千万個の液滴で構成され,液滴の微細挙動はディーゼル機関の燃焼過程に多大な影響をおよぼす.そのため,噴霧液滴の空間配置を詳細に調べることは,非定常噴霧燃焼過程を把握する上で極めて有用である.当噴霧のCCD撮影画像は解像度が低く,噴霧全体を撮影する場合は噴霧内液滴の認識は非常に困難である.液滴の拡大撮影の場合は,それらの微視的挙動は得られるが,その情報は噴霧の局所領域に限定される.さらに,非定常噴霧はすぐれて三次元構造を持つが,その構造を調べた例はない.本研究では非定噴霧の微細構造をさらに詳細に把握するため,当該噴霧の超拡大撮影手法を提案し,その三次元構造は数値解析によって調べた. 超拡大撮影系は,屈折式望遠鏡を応用したレンズ系・低コヒーレント性のレーザ光源・8x10インチの大判フィルムから成る.本研究代表者が世界で初めて約35年前に応用した望遠接写法では,噴霧の外縁から数ミリの範囲の液滴情報に限定されたが,本新手法によれば,噴霧軸近傍の液滴数密度が極めて高い領域を除いて,液滴撮影が可能になった.撮影像にはPIV手法を適用し,当該噴霧の二次元渦構造が得られた. 数値予測は,噴霧挙動解析用の既存KIVAコードを参考にし,液滴はDDM,気相の乱流はLESによって行い,計算格子数の増加,数値粘性のCIP法による低減,液滴分裂モデルの最適化の手法で非定常噴霧の三次元構造の予測が可能になった.また,LIC法による二次元渦構造や速度勾配テンソルによる三次元渦構造の同定を行った. 主な結果は次の通りである. 1.本撮影法により,噴霧軸から3ミリから噴霧外縁にかけての液滴補足が可能である. 2.液滴のザウタ平均粒径は約10μmから20μmの範囲にある. 3.燃料噴射圧にほぼ比例してザウタ平均粒径は減少する. 4.小・中液滴は噴霧先端に現れる大規模構造の渦の流動に追随し,液滴径が大になるほど渦の外側に存在し,二次元渦構造は千鳥状の配列になる.
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