研究概要 |
電子ビーム露光装置などに装着された真空機器としての磁気軸受を使ったターボ分子ポンプを,これを備えた構造物に対する制振機器としても活用する狙いを持つ研究である。H18年度の制御系構築および予備検討を踏まえて実施したHl9年度の研究項目は以下のとおりである。 (1)真空系の実験:ターボ分子ポンプを回転状態に持ち込むためには粗引きが必要となる。そのための真空システムを考察し,実験系を構成した。 (2)回転実験:粗引きポンプで低真空にした後,ロータを回転駆動する実験を行った。静止浮上状態では安定であったが,回転駆動に伴う外乱の影響により安定性が劣化した。そこで,モード抽出・分配演算部の再度調整と姿勢安定性を確認するための回転状態におけるステップ応答試験を実施した。 (3)回転下における鋼板の制振実験:現行の制御系では3,000rpmが安定な回転数であり,この条件下で鋼板の制振を行った。鋼板の1次および2次ベンディングモードの加速度信号に基づいて,回転状態にあるロータを並進・ティルト方向に強制加振した。その結果,1次ベンディングモードに関しては明瞭な制振効果が認められた。しかし,2次ベンディングモードに関しては,制振効果は不明瞭である。 (4)制振効果の改良:上記(3)を改善するために,フィードフォワードパスのモード演算を再調整し,かつ回転による振れ回り振動を抑制するノッチフィルタを実装した。その結果,1次および2次ベンディングモードともに十分な制振効果が得られた。 (5)高速回転:磁気軸受の安定性を向上させて3,000[rpm]以上での回転を行わせるべく,DSPシステムのAD変換器を同時サンプリングに変更した。これに伴いDSPの移植を実施した。現在,4,000[rpm]の回転数となっており,この状態下での鋼板の制振効果も確認されている。
|