研究概要 |
平成18年度は,二つの長方形容器をもつ弾性構造物が水平方向の正弦加振を受け,容器内液面に1次のスロッシングモードが励起される場合を対象とし,構造物と液面の非線形連成振動について理論的,実験的に調べた.その結果,以下の知見を得た. 1.理論解析では,ガレルキン法を用いて液面挙動を支配する偏微分方程式系を常微分方程式系(モード方程式)に変換し,同時に流体力の非線形性を考慮して構造物の運動方程式を誘導した.それらの運動方程式の強制振動解を調和バランス法の原理に基づいて近似的に求め,構造物と液面の変位に対する共振曲線の式を導いた. 2.構造物と二つの容器内の液面スロッシングの固有振動数の間に1:1:1の同調条件が満たされる場合,同調点付近では構造物は制振されるが,同調点の両側に新たに二つの共振ピークが現れる. 3.液位が高くなると,共振曲線の左側のピーク付近においてピッチフォーク分岐が生じ,一つの容器の場合に対応する安定な分枝が不安定な分枝に変化し,新たに二つの安定な分枝が現れ,二つの容器でスロッシングの振幅が異なる振動が発生する. 4.正弦励振の振幅が大きくなると,上記3の二つの安定な分枝上にホップ分岐が生じ,振幅変調運動が発生する. 5.二つの容器の微小な寸法差に起因して液位差が生じると,"対称性の破れ"が起こり,ピッチフォーク分岐は起こらずに上記3の二っの安定な分枝が離れ,片方の容器内のスロッシングが常に大きい振幅で発生する. 6.離調度(構造物と液面スロッシングの固有振動数の差)を定義すると,高液位で離調度が負の場合,左側のピークの励振振動数範囲が広くなり,共振曲線の形状は複雑になる.一方,離調度が正の場合,左側のピークの励振振動数範囲は狭くなり,ピッチフォーク分岐が起こりにくくなる. 7.実験では理論解析結果と定量的にほぼ一致した共振曲線が得られ,理論解析の妥当性が確認された.
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