研究概要 |
運動方程式を位置座標で差分化し,時間座標でラプラス変換して境界の影響を受けない内部節点の運動方程式の漸化式を導き,内部節点の運動方程式から得られる進行波・後退波解が境界節点の運動方程式を満足するための条件より波動吸収制御則を生成した.内部節点の運動方程式に存在して境界節点の運動方程式に存在しない項が制御量であるので,その項を境界節点変位に対する周波数を変数とした伝達関数として求め,制御フィルタをカーブフィット技法によって生成した.これは制御伝達関数が無理関数を含むため一般的な逆変換手法では実時間に変換できないためである.片側の境界節点に制御器を設置する片端制御の場合(上流側と下流側)と両側境界節点に設置して両端制御する場合の3つの場合の特性及び制御性能を数値シミュレーションによって検証し,生成した制御フィルタで波動吸収制御が実現することを明らかにした.走行速度に関わらず,片側制御ではロープ長内で加振節点から制御節点に向かって波動伝搬状態が実現し,加振節点から非制御節点間では通常の振動モード(共振周波数では共振モード)となること,両端制御では,其々の制御節点に向かって波動が伝播する状態を実現することが分かった.共振周波数近傍で制御振幅は非制御に比して十分小さい.一方,カーブフィット技法に基づく制御フィルタのため,長時間制御演算で発散する場合があることも明らかになった.さらにロープなどの会布定数系の位置座標差分化による制御手法の汎用性を検証するため,ロープより適用条件が厳しいはりに同じコンセプトに基づく制御則を適用して,差分化手法がより一般的に適用できることも確認した.さらに,次年度以降の制御実験のためのロープシステム波動制御実験装置設計と部分製作を行った.また,速度変化に起因するパラメータ変化に対処する制御アルゴリズム生成法として,フィルタパラメータを実時間で切り替えるためのスーパバイザをフロベニウスノルムを近似の指標として設計する方法を検討した.
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