研究概要 |
超多自由度ロボットの多数の冗長自由度を活用しつつ所望の出力軌道を獲得できる学習制御を確立することを目的として,超多自由度平面直列マニピュレータを対象に,副目的運動の設定および最適初期姿勢を獲得する手法を提案し,運動制御シミュレーションと実験検証を行った.得られた成果は以下のとおりである. (1)冗長自由度を活用する学習制御則の構築 主目的運動として手先の目標軌道への追従,副目的運動として障害物回避速度ベクトルを障害物から退避する速度と,これと直交する新たな成分との合ベクトルとして設定し,後者の大きさを障害物と節の距離の非線形関数で与える「渦場の障害物回避速度ベクトル」とし,さらに障害物から遠い関節の「主目的運動の達成を支援する速度ベクトル」と併せて副目的運動を設定して誤差履歴線形和学習制御則に適用する新しい制御系を構築した. (2)後退学習による初期姿勢の獲得 (1)の学習制御により収束解を得た後,その最終姿勢を初期姿勢として,目標軌道を逆に辿る学習を反復して行い最終的に最適な初期姿勢を得る後退学習を提案し,シミュレーション検証を行った.その結果,障害物の影響が大きく,一定の初期姿勢では目標軌道の終端までの達成が困難な場合も,収束解が得られることがわかった. (3)平面10R直列マニピュレータの試作 各節長が等しく100mmの平面直列マニピュレータを試作した.DCモータと遊星減速機からなる各アクチュータについてローカルサーボ系を構築するとともに,CANシリアルプロトコルにより直列接続したホストコンピュータと併せて実時間学習制御系を構築した. (4)学習制御実験による検証 試作マニピュレータにより学習制御則の運動制御実験を行い,多数の障害物が林立する作業空間内で,ロボットは障害物と衝突することなく直線・折れ線・円などの目標軌道を達成し,提案した学習制御手法の妥当性・有効性が確認された.
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