本研究の目的は、永久磁石を内蔵した水中マイクロロボットを、駆動磁界の波形を制御することでワイヤレス、かつ3次元的に泳動させるための基盤技術の確立にある。本研究の大きな特徴は、水棲生物の泳動を真似た推進機構を外部磁界でワイヤレス駆動可能な磁気アクチュエータによって制御することにあり、生物模倣技術と磁気応用の融合を試みる新規なものである。本研究では、魚の尾びれの扇ぎ運動とゲンゴロウのパドリング運動を取り上げ、動の観察を基にそれらを模倣した推進機構を開発し、旋回運動と上下運動、さらに3次元運動へと展開した。以下に、研究成果の概要をまとめる。 1.泳動機構の開発 タナゴとゲンゴロウの泳法を高速度カメラにより観察し、その結果を基に永久磁石の回転振動を扇ぎ運動やパドリング運動に変換する機構を開発・評価を行った。また、ピッチングを低減するためにロボット胴体の重心と浮心を適切な位置に調整した。 2.マイクロロボットの外部磁界による3次元泳動法の確立 直流バイアス磁界による旋回運動を提案し、8の字旋回させることに成功した。続いて機械的に重心を移動させる可変トリム制御機構により上下運動する方法を開発した。この2つの結果を基に重心移動が生じる磁界強度と旋回するための磁界の条件をずらすことによってそれぞれの運動を独立に制御する条件を見出し、本研究の目指す3次元泳動を実現した。 3.科学教材への展開 本マイクロロボットは構造が単純なため、磁気現象やロボットをわかりやすく説明する科学教材としても期待できる。そこで、推進機構と同じ動きをするマン・マシンインターフェイスを開発し、直感的にマイクロロボットを制御する新しい科学教材を提案した。本教材を用いた出前講義を実施し、高い教育的効果があることを確認した。
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