研究概要 |
本研究は,高齢者が楽しく行動すると共に自然に運動能力が維持・増進できることを目指し,トレーニング機能を備えた電動車の制御システムを設計することを目的に,進めてきており,当初の計画に従い,以下の研究成果が得られた。 ・「等価入力外乱」制御手法のメカニズムの解明:本研究では,運転の安全性を保証するために,タイヤと路面の摩擦係数の推定をリアルタイムで行わなければならない。推定手法として,「等価入力外乱」という新しい制御手法を用いるが,従来の手法に比べ,この手法の優位性を明らかにするために,本研究では,まず,「等価入力外乱」制御手法のメカニズムの解明を行った。その結果,「等価入力外乱」手法は,本質的に2自由度制御系となっており,次数の低いローパスフィルターを設計することにより優れた推定特性が得られることがわかった。 ・人間の感覚に合わせたペダリング負荷調整システムの開発:高齢者の安全を保証しながら,トレーニングを行うために,本研究では,まず,加齢による足の筋肉の萎縮を詳しく調べた上で,足に加える負荷を決めるアルゴリズムを確立した。具体的に,リハビリで広く用いられる心拍数を基準に,搭乗者の心拍数からカルボーネン法により目標心拍数を算出し,目標負荷を決める手法を開発した。また,この手法の有効性を走行実験により検証した。次に,負荷オートーチューリングを実現するための第一歩として,負荷調整つまみを電動車に取り付け,つまみの位置を40度から320度の間で自由に設定できるようにし,任意の位置に対応する負荷を発生しながらも操縦系の安定性を保証する制御系は,Dynamic parallel distributed compensation(DPDC)という新しい制御理論に基づき設計し,その有効性を走行実験により検証した。 ・Elimination treeに基づくLDL分解法のアルゴリズム開発:大規模な最適化問題を効率よく解くために,本研究では,Elimination treeに基づくLDL分解法という新しい手法と提案する。この手法の有用性を,まず,大規模最適化問題として広く知られているマーケティング問題を例に検証を行った。さらに,それに基づき,最適化アルゴリズムを開発し,Matlab環境で実装した。 ・ロバスト制御系の設計手法の検討:路面状況が認識され人間のハンドル操作に反映されるまでに少し時間がかかる。このむだ時間は,場合によって,ハンドル操作の不安定を引き起こすことがある。このむだ時間の影響を抑え,操縦システムの安定性を保証するために,ある一定範囲内で変動するむだ時間に対するロバスト制御システムの設計手法を,研究代表者らの提案したフリーウィティング法を用いて提案した。本手法は従来の手法に比べて保守性が少ないことが特徴である。
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