研究概要 |
高齢者は,歩行に伴う足部への衝撃から腰部への負担及び骨盤と大腿骨のズレが問題となっている.さらに,バランス感覚や反射神経が鈍くなり,歩行時における足裏部の重心位置が外側にずれることから,バランスを崩し転倒し易くなる問題が指摘されている.そこで,介護予防を目的とした装具として,寝たきりなどの原因となる転倒を未然に防ぎ,健康維持が可能なウエアラブル装具の開発を目的とする. 本研究では,歩行時において身体の拘束を伴わない靴に着目した.そして,空気圧を用いて能動的に靴底の剛性を変化させることにより,使用者の歩行バランスを調整する靴の構造を検討した.提案する靴は,加圧部,バランス調整部,チャンバ部から構成され,バランス調整部の要素として,内部が連泡型多孔質構造ゴムを有する多孔質複合ソフトゴム要素(以下,複合ゴム要素と言う)を使用することとした.また,足裏部重心位置を能動的に移動させるための複合ゴム要素の制御流れを提案した. 実験では,剛性の異なるゴムを接合した複合ゴム要素の基礎特性として,加圧時挙動,剛性特性を明らかにし,位置制御及び力制御に対する階層フィードバック制御則の有効性を調べた.さらに,複合ゴム要素を並列に配置した時の外力推定性能を明らかにした.そして,靴底に配置する複合ゴム要素の最適な形状,サイズ,数,配置パターンを明らかにするための基礎試験装置を製作した. 次に,試作した靴底部複合ゴム要素内圧力値から,靴のロール動作とピッチ動作を区別するために,ピッチ動作に対し複合ゴム要素内差圧が一定となる複合ゴム要素形状を基礎試験装置により明らかにした.その結果,土踏まずから爪先にかけて傾斜する形状が最適であることが分かった.また,安定歩行を実現する靴底を試作するために,空気圧源(ゴム型圧縮部),逆止弁,流れ切換弁,弁駆動回路の検討を行った.
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