研究概要 |
現在,わが国の死因の第一位を占めるのはがんである。がんの三大療法として,外科治療,放射線治療,化学治療が行われているが,様々な副作用を伴うという問題がある。 近年がん治療に,パルスパワーを用いる方法が提案されている。これはがん細胞にナノ秒パルスパワーによる高電界(数百kV/cm)を印加すると,がん細胞を物理的に破壊するのではなく,がん細胞に自発的な死(アポトーシス)を起こさせることが最近の研究で明らかになったことによる。がん細胞に高電界をかける単純な方法は針電極をがん細胞の位置まで刺す方法であるが,臓器等の複雑な部位への電界供給は難しい。そこでアンテナで電磁波を照射し,がん細胞の位置で電界を集束し重ね合わせ,高電界を印加するという方法が提案されている。 そこで本研究では,パルス高電界がん治療に用いる極短パルス高電界(100kV/cm)をがん細胞に印加するための,1GHzの周波数のパルス電磁波を印加できる高電カパルス電磁波発生装置の開発を行っている。本年度の研究では高周波で動作する上,100kV以上の高電圧で充電可能とするため,水コンデンサと水ギャップスイッチを組み合わせたパルス発生装置を提案しその出力特性を測定した。さらにアンテナからの電磁波を集束板で集中して患部に電界を印加する方法について研究した。結果,10kVの充電電圧で250MHzの周波数成分を持つパルスを発生できた。このパルスにより最大電界強度112kV/mの電磁波を放射することができた。さらに集束板で電磁波を集束したところ,300kV/mの最大電界強度を得ることが出来た。充電電圧と集束度を上げることで目標の100kV/cmの電界強度が得られる目処が立った。 超短パルス高電界による細胞の挙動実験は電磁波印加に先立ち,真核細胞である酵母へ7.5MHz,最大22kV/cmのパルス電界を電極で直接印加して生存率を測定した。
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