研究概要 |
ナノ秒程度の非常に短い時間,超高電界(数10kV/cm程度)をがん細胞に印加すると,細胞を物理的に破壊するのではなく,細胞の自発的死(アポトーシス)を起こしがんを治療することができる。この効果を体内部の患部に非外科的に適用し治療に利用できるように,アンテナにより患部に集束板で集中して電界を印加する方法について研究している。第一段階の目標は電界強度100kV/cm,周波数成分500MHzのパルス電磁波を印加できるパルスパワー発生装置の開発においている。本年度は前年度開発した電磁波放射効率を高めるためのLC反転回路による単一周波数電磁波発生装置によって放射された電磁波を集束板により集束した場合の電界強度分布測定を,微小ループアンテナを用いて行った。その結果,250MHzの周波数成分において最大電界強度は11.3kV/cmで,約5mm×5mmの範囲で10.8kV/cm以上の電界強度が得られた。この電界強度は電極を用いて直接がん細胞に高電界を印加したときには治療効果が期待される電界強度である。その電界強度が最大の点から横方向に約±20mmの点では電界強度が半減しており,遠近方向では約+50mmで約30%小さくなっていることが分かった。これより電磁波集束板により電磁波が集束されていることが確認され,患部のみに強電界を電磁波で印加することが可能なことが示された。さらにパルス電磁波による生成電界を大きくするためアンテナへの印加パルス電圧の高電圧化の検討を行い,水コンデンサへの充電パルスの圧縮回路を追加することで,250MHzの周波数成分を維持しつつ集束点での電界強度を15.3kV/cmまで35%上げることに成功した。
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