電力系統において生起する種々の現象の解析は、英系統における実験が困難なことから、主として計算機シミュレーションで検討されており、実機による実証試験による確認はあまりなされていない。しかし、実際の電力機器は必ずしも正確に等価的な数学モデルで置き換えることが出来るわけではなく、等価モデルに基づくシミュレーションは精度的に限界があり万能ではない。系統に生起する実現象の把握が、実験室規模で容易に行えることの利点は電力システムの研究において甚だ大きい意義がある。そこで本研究では、キャンパス配電系統を活用して従来にない大規模な電力系統実証実験システムを構築し、これを用いて送電系統並びに配電系統の諸課題に対する具体的な対策を実証的に検討している。すなわち、本学実験室の現有設備である模擬送電線設備では、従来どおり主として送電系統における課題を検討する。さらに本学キャンパス内の配電系統を新たに実験実証用の電力システムと見立て、主として配電系統における課題を検討する。さらに両系統にまたがる課題について検討できるようにするため両系統を統合した実証実験システムの基本設計を行なう。 平成18年度に得られた主な結果は次の通りである。 1.現有の模擬送電線設備を用いてFACTS機器(TCSC)のインターネットを介したオンラインデジタル制御方式の検討を行い、TCSCのパラメータをリアルタイムで調整することにより、電力系統安定度を向上させることができることを確認した。 2.ネットワーク情報端末NCTを用いてキャンパス配電系統の電力情報の収集と電力品質評価を行い、配電系統における高調波や三相不平衡の季節変化の実態を明らかにした。今後はこれらの出^田を積み重ねて負荷モデルの確立について検討する予定である。
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