研究概要 |
ノンストップ自動料金支払システム(ETC:Electronic Toll Collection)の利用率は75%程度まで達し,この急速な普及に伴って複数のETCレーンを有する料金所も次第に増加傾向にある.このような状況下,料金所付近の電波環境改善対策として種々の電波吸収体が実現されてきたが,ETCの隣接レーン間における電波(5.8GHz,円偏波)の相互干渉を抑制することを目的とした吸収体として,これまでに透明タイプが主に利用されている.しかしながら,透明導電膜を利用した平板構造であることから風の影響を十分に受けるというデメリットを有している.このため,通気性を有し,かつこれまでと同様に安全性を考慮して視認性を有するレーン間用の電波吸収体の実現が必要不可欠な状況にある. そこで本研究では,これらの付加価値を満たす構造として,耐衝性に優れるガラス繊維強化プラスチック製誘電体平板に周期格子を施した構成,廃材を利用した酸化鉄を金属円筒に被覆し周期的に配列した構成,さらには耐環境性に優れる磁性ゴムシートに円形格子を施した構成を中心に,伝送線理論や電磁界解析を駆使した設計から実際のサンプルを用いた実験的評価までの詳細な検討を進めてきた.この結果,バックメタルとして通気性や視認性を有する金網を使用することで,ETCで使用される円偏波に対して良好な反射減衰量およびシールド量が得られることを解析と実験の両面から確認でき,提案するETCレーン間用電波吸収体の実現性を明らかとした.なお,方形格子型電波吸収体については実際のETCレーンにおける施工試験も実施し,電界強度測定により設置効果の検証からその実用性も確認することができた.
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