AS電池は最新の電力貯蔵用設備であり、負荷平準化の切り札として期待されている。本研究では運用実測データを5分毎に分析し、導入効果を定量評価するとともに、需要予測に必要な統計分析を行い、多目的な利用ニーズ、特に電力品質維持と再生可能型電源の出力平滑化に応える運用効率の高い運用計画法を研究した。 まず、需要予測に関しては、実測された需要データはキャンパスカレンダーによって分類の後、近隣地域の気象実績情報を入力して気温や年度に関する相関の解析を行った。これにより、相関が最も強いのは平均気温に対する最大電力であること。気温感応度は年度により推移すること。年度による補正係数も算定できることなどが明らかになった。 また、これら実績情報をもとに、需要予測の手法開発に取り組んだ。限られた敷地内での需要予測についての事例は少ないが、マイクログリッドの普及など、これからの系統技術にも関わる重要な課題となっている。過去事例検索の手法を取り入れ、スクールカレンダー(学事目程)を考慮した。 需要予測が5%程度の誤差範囲に抑えられることが明らかになったので、これを用いて当日の電池運用制御を検討した。これは現在パターン運転を採用しているNAS電池の運用に、負荷追従運転を導入し、需要家の負可制御と料金低減を助けるもので、これまで難点とされていた予測誤差による電池枯渇や利用率低下を解消するよう工夫されている。 これらの研究は東京電力(株)の協力を受け、定期的な打合せをしながら遂行した。研究成果は国内2件、海外1件の論文として投稿された。NAS電池をより多目的に、特に再生可能型電源(風力発電等)の出力平滑化に応える運用のあり方の検討については、電気2重層キャパシタとの併用の可能性を検討している。
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