電力貯蔵用設備であり実用化が最も進んでいるNAS電池の運用実績分析と多目的利用への適用について研究した。平成18年度は主に大学キャンパスに設置された実用機の運用実績データを公表し、システムの信頼性や総合効率を定量化することができた。すでに民間需要家への設置が80箇所を超えるNAS電池システムであるが、企業機密に属する需要家データは公表されることがなかったので、大学キャンパス内の運用実績紹介は貴重である。このデータは継続的に逐次統計を取っているので寿命約15年といわれるNAS電池の5年間にわたる統計データの価値も高く評価されている。 平成19年度には需要家内の電力需要予測とNAS電池の効率的な運用を研究した。これまで研究が進められてきた電力会社管内の需要予測とは異なり新規性の高い研究である。本研究では過去事例検索を中心とした予測手法を開発し、蓄積された実績データを用いてその高い精度(約5%)を定量評価できた。民間需要家にも広く適用できるものと期待されている。 NAS電池の多目的運用に関しては、従来のパターン運転に替わる負荷追従運転の計画手法と当日の制御手法を検討し、1)受電電力を平準化する。2)不用意な受電電力突出を回避する。3)電池枯渇や余剰を起こさない。という要求に応える運用手法を開発した。研究成果は電気学会全国大会に2件、英国で開催されたUPEC2006で1件の論文として発表し、2008年7月英国で開催予定のPSCC2008での論文採択が決定している。風力発電を中心とする再生可能エネルギーの利用技術に関しては、50MWの風力発電に対して30MWのNAS電池を設置する六ヶ所村の現地を視察し、出力変動を抑制しつつ経済性を追求する電池運用の研究を続けている。
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