研究課題
基盤研究(C)
無声放電技術を用いて活性化したHFC134aガスの原子を菜種エステル油とシリコーン油に結合させた変性油を試作し、EHDポンピングと電気絶縁強度を調べ新しい知見を得た。1.FT-IR ATR法を用いて標準油と変性油のスペクトル差を測定した。変性菜種エステル油ではC-FとC-Oラジカルが形成され、変性シリコーン油ではC-HとC-Oラジカルが形成されることが分かった。2.変性油のEHDポンピングは、標準油に比べて非常に強化され液体ジェットを発生した。EHDポンピングは擬似ドーナッツ-平板電極系を用いて評価した。伝導電流は20kVの印加電圧で1μA以下であった。また、平行平板電極間の電位分布測定から、変性油は電極付近にヘテロチャージ層を形成することが分かった。このチャージ層は液体中のイオン化成分に起因し、液体ジェットの発生は純伝導ポンピングのメカニズムによることが示唆された。3.供試油のインパルス沿面放電特性と交流破壊電圧を測定した。変性油の正極性沿面ストリーマは標準油に比べて15%程度長く進展する。また、変性油の交流破壊電圧は標準油より低下する。しかし、変性菜種エステル油は、標準の鉱油に匹敵する電気絶縁耐力を有することが分かった。EHDポンピングは、油入電力機器などの新しい冷却手法として期待できるが、EHDメカニズムと電気絶縁の相反的関係を考慮する必要がある。これらは米国の学会誌(IEEE Tran.DEI)に掲載された。一方、EHDポンピングを十分に引き出すためには、動作メカニズムに対応した電極系の開発が重要である。本研究では同軸円錐型電極系を新たに考案し、作動液体にHFC43-10を用いてポンピング能力を明らかにした。同電極系は接地円錐筒電極と同心に棒電極が配置され、棒電極に正の直流電圧を印加すると強力な液体ジェットが発生する。また、このジェットは棒電極表面の部分的な絶縁被覆によって強化することが分かった。これについては国際会議ISEHDで発表した。また、EHDポンプに関する特許を出願した。
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IEEE Trans. Dielectries and Electrical Insulation Vol. 13・No. 3
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