研究概要 |
環境調和型変圧器を想定した新しい絶縁材料の誘電・絶縁特性について検討し、将来的に液体と固体の複合絶縁システムを市場投入する事の可能性を実証するべく、本年度は次の事項につき評価を行い、成果を得た。 1.菜種油の誘電・絶縁特性評価 脱泡により油中の気泡、水分量を減少させ、脱泡しないものと比較検討を行った。その結果、菜種油、比較材料として用いた鉱油ともに、脱泡により絶縁油の絶縁耐力が上がり,安定度も向上する事が明らかになった。古い油ほど水分を含み、酸化するため、脱泡の有無による絶縁特性の差が大きい事が明らかになった。 2.ポリマーナノコンポジットの誘電・絶縁特性評価 各種フィラーを用いたエポキシナノコンポジット試料を独自に創製し、試料表面に部分放電を曝して侵食深さを測定することで、耐部分放電性の評価を行った。その結果、ナノ粒子を用いるナノコンポジットが耐部分放電性に優れることが定量的に明らかになった。これは、粒子間距離および電界変歪に深く関係があることを突きとめた。 3.液体・固体複合材料を用いた絶縁システムの絶縁特性評価 充填物(ガラス球)が(オイルカップ底面から油面までの高さ/同底面から球電極下部までの高さ)=1以下の場合では、絶縁破壊強度が大幅に低下することなく油量を減らすことができるが、1以上の場合では、絶縁破壊強度は低下する事が明らかになった。電界解析の結果、誘電率の高いガラス球と誘電率の低い菜種油では、ガラス球に電気力線が集中しガラス球と球電極間に高電界が生じるため、菜種油の破壊強度を超え、ガラス球の沿面をたどって絶縁破壊が起きる事が明らかになった。
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