狭ギャップIII-V族化合物半導体の格子不整結晶成長を検討し、基礎的知見を得た。格子不整成長における組成傾斜法には、固溶硬化のため、貫通転位密度低減に有効な場合とそうではない場合がある。GaAs上InAsにおける組成傾斜法には、積極的な転位密度低減効果はない。また、GaAs上In(Ga)Sbにおいては、貫通転位が残留ドナーの起源となって電子輸送を制限しており、対消滅による貫通転位密度低減のため、ヘテロ界面からの距離が増すにつれ局所的ドナー密度は低く、局所的電子移動度は高くなる。GaAs上のInGaSbチャネル/InAlSb障壁ヘテロ構造においては、数μmの厚いInAlSbバッファ層を採用することで、lnGaSb中の貫通転位を低減し、室温で30000cm^2/V-s、低温で130000cm^2/V-sという高電子移動度を有する二次元電子ガスを形成できた。この二次元電子ガスでは、異方的積層欠陥の影響は見られず、移動度は等方的である。さらに、Rashba型およびDresselhaus型スピン軌道相互作用の競合が観測される。 デバイス実装プロセス基礎検討を行い、GaAs上に格子不整成長した狭ギャップInGaAs/InAlAsメタモルフィックヘテロ構造について、AlAsナノ犠牲層選択エッチングによるエピタキシャルリフトオフ(ELO)・異種基板上van derWaals貼付(VWB)を実現した。これは、メタモルフィック系に関するはじめてのELO・VWBである。これによって作製したセラミック基板上・シリコン基板上のホールバー素子は、11000cm^2/V-sという室温電子移動を示した。この室温電子移動度は、ELO・VWBによって作製した素子のキャリア移動度としてはこれまでで最高の値であり、格子不整結晶成長を用いた狭ギャップ化合物半導体デバイスの異種材料融合集積の可能性を示すものである。
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